戦禍により幼くして名前と故郷、言語を喪失した建築史家アウステルリッツ。帝国主義の遺物の病院、要塞、駅舎を巡りながら、自らの過去を探す旅を続けます。建物や風景を目にした瞬間にフラッシュバックする忘却された記憶、重なり合う暴力と権力の歴史。
「とびきり孤独な読書を恐れない人のための作家」と言われるゼーバルト。長い長いパラグラフと共に暗い深淵の中へと引き摺られながらも、彼の文章に触れると、心許せる旧友に会ったような感覚が湧き上がる。それは、わずかな希望と呼べるものかも知れません。「メランコリーは無力にさせるのではなく、何かしようという気にさせてくれる」と彼が語っているように。
発行:白水社
発行年:2020年
サイズ:四六判
ページ:298p