





「戦う方法はただ一つ。盗られても盗られても、また思い出をつくること。」
いつも海の冒険話を聞かせてくれていた大好きなおじいちゃんの様子が少しずつ変わっていったのは、春海がもうすぐ六年生になる春休みのことでした。"思い出泥棒が記憶を奪い取っている"と聞いた春海は、思い出泥棒と戦う決心をします。盗られた思い出はもう戻ってこない。思い出だけじゃない、言葉、笑顔、釣りや散歩に行きたい気持ち。いろいろなものを少しずつ盗られていくおじいちゃんと共に過ごしながら、春海は思い出泥棒に懸命に立ち向かっていきます。
しだいに記憶がなくなっていく家族の認知症を「思い出泥棒」として描いた物語。受け入れがたい現実を物語として描き出す様は、抜き差しならない状況から生まれる民話のように、私たちの行く先を照らしてくれます。
発行:イーハトーヴ書店
発行年:2022年
サイズ:四六判
ページ:80p