





ー―忘れたくないものを忘れても平気になるために短歌を作っている。今はそう思っている。
そう話す歌人が紡ぐ言葉は、消えゆく輝く瞬間と、豊かな寂しさのことを知っている。明日も明後日も同じように続いていくことは約束されていないのに、それでも懸命に日々を掬い上げる、その姿はまるで勇者のよう。300首を超える歌々が少しずつ重たいカーテンを持ち上げ、わたしたちに鮮やかな音楽を聴かせてくれます。
地下鉄の窓があいてる夜なのに夜みたいだと思ってしまう
広いパン売り場で明日のパンを選ぼうよ明後日のも選ぼうよ
自転車のかごに夕日は溜まらずに夕日を帯びて抜けていく風
発行:ナナロク社
発行年:2022年
サイズ:B6判変形
ページ:136p
*増刷記念の特典付き